留辺蘂神社と温根湯神社の宮司コラム

北海道北見市留辺蘂町に鎮座する、本務社「留辺蘂(るべしべ)神社」と兼務社「温根湯(おんねゆ)神社」の、第4代宮司 田頭寛(たがしら ひろし)が、神道・神社に関する事や、日々の社務やその他諸々について、呟きます

「紀元節」及び「建国記念の日」の由来

本日(2月11日)は「建国記念の日」という祝日です。
建国記念の日は、我が国にとっては格別な意味を持つ、実にお目出度い記念日でありますが、残念ながら最近は、そもそもこの日は何に由来する記念日でどうして祝日になっているのか、という事を知らない日本人がかなり多いらしいです…。

「しらべぇ」というニュースサイトに丁度10年前の今日アップされた記事に、しらべぇ編集部が全国の男女1,331人に対して「建国記念の日とは、とある天皇が即位した事に由来する日なのですが、その天皇を以下の中から選んで下さい」という質問をした結果が、掲載されていました。
以下がその質問(五択)と回答です。なお、このアンケートが実施された当時は平成時代であるため、この質問に於ける選択肢の「今上天皇」とは、令和現在の今上天皇ではなく、平成当時の今上天皇(現在の上皇陛下)の事です。

 

【質問】建国記念の日はなに天皇が即位した日が由来か?

① 今上天皇(現在の天皇陛下)
② 昭和天皇
③ 大正天皇
④ 明治天皇
⑤ その他

【回答一覧】

明治天皇 40.4%
その他  28.8%
昭和天皇 20.2%
大正天皇  7.2%
今上天皇  3.2%

 

江戸時代が終わって日本が近代国家として歩みを始めた明治時代の幕開けを “日本の建国” と考える方が多かったようで、4割もの回答者が「明治天皇」と答えていますが、勿論それは誤答です。
この質問は簡単なひっかけ問題で、正解は「その他」に含まれている神武天皇です。

建国記念の日とは、簡潔にまとめると、天孫(当神社の主祭神である天照皇大神様から、5代先に当る直系の子孫)である神倭伊波礼琵古命様が、初代天皇「神武天皇」として御即位されたと伝わる日を、「日本が建国された日」「我が国のはじまりの日」としてお祝いする記念日です。
それにしても、約7割もの回答者が、建国記念の日に即位した天皇を知らなかったというこのアンケート結果には、正直驚きました。
これは決して “上から目線” な言い方をしているわけではなく、私自身は今まで、神武天皇が初代天皇として即位された日を「日本のお誕生日」としてお祝いする事は、日本人として当然の常識であると信じて疑っていなかったので…。

奈良時代に成立した日本の官選歴史書(国家による公式の歴史書)である「日本書紀」の巻第三には、『辛酉年(かのとのとりのとし)の春正月の庚辰(かのえたつ)の朔(ついたちのひ)に、天皇(すめらみこと)、橿原宮に即帝(あまつひつぎ)位(しろしめ)す。是歳(ことし)を天皇の元年(はじめのとし)とす』と記されていて、様々な苦難を乗越えて日向から大和の地へと到達された神武天皇が、橿原宮で日本を建(た)てると宣言された日が明らかにされております。
その「辛酉年庚辰の朔」を、明治時代になってから西暦年月日に換算して算出されたのが、紀元前660年(皇紀元年)2月11日であり、その日を以って、我が国は神話時代(神代)から、現代へと続く歴史時代へと入ったのです。

そしてこの事は、我が国が神話と歴史が直結している世界唯一の国家である事をも意味しています。
世界各国の王朝は、かつてはそのほとんどが神話に起源を持っていましたが、神話に起源を持つそれらの王朝は日本だけを唯一の例外として全て滅亡してしまい、我が国のみが、現在も皇統連綿として万世一系の皇室を戴いているのです。

 

ところで、「世界最古の国家」はどこの国か、御存知でしょうか。
これについては、ここまでの話の流れからも推測出来るのではないかなと思いますが、その答えは、我が国・日本です。
勘違いをされている方が意外と少なくはないようですが、古代文明が栄えた中国やエジプトなどではないのです。

中国については、「中国三千年の歴史」とか「中国四千年の歴史」などという言葉が一人歩きしている事から(どういうわけか最近では「中国五千年の歴史」なんて言い方もあるそうです)、中国を世界最古の国と勘違いしている方も多いようですが、現在の中華人民共和国は、建国からはまだ七十数年しか経っていない若い国家です。
中国にはかつて様々な帝国や王国が存在していましたが、王朝が替わる度に王家の血統が断絶し、前王朝の正統性が悉く否定されてきたため、いくら郷土としての歴史は古くても、中国にひとつの国家としての連続性は無いのです。
中国人の9割以上を占める主要民族は漢民族ですが、そもそも中国の歴代統一王朝のうち「元」はモンゴル人が、「清」は満州人が建国した国であり、つまり明らかに漢民族とは異なる、他国民や異民族などが建てた国家も歴代王朝に含まれているため、どのように好意的に解釈しても、そこに連続性を見出す事は出来ないのです。

エジプトについても、中国同様、かつての王朝は遥か昔に断絶しているため、やはり国家としての連続性をそこに見出す事は出来ません。
ギザのピラミッドなどで知られる高度なエジプト文明を築いた古代のエジプト王朝は、二千年以上も昔の紀元前のうちに、とうに滅び去っており、その後のエジプトは、アッシリア帝国、アケメネス朝ペルシア、マケドニア帝国、ローマ帝国、イスラム帝国(ウマイヤ朝、アッバース朝、ファーティマ朝など)、オスマン帝国、大英帝国などの様々な外国勢力に近代まで支配され続け、第一次世界大戦後にはエジプト王国が成立しますが、第二次世界大戦後には、自由将校団によるクーデター(エジプト革命)で王政は廃止され、現在のエジプト共和国は、中華人民共和国同様、建国からはまだ七十数年しか経っておりません。

 

ところが、そういった中国やエジプトをはじめとする諸外国に対して、日本は長い歴史(神話に基づくなら神武天皇の御即位から2,600年以上、考古学に基づく場合はもっと短くなりますが、それでも、短く見積もっても大和王権の発足から1,800年以上)に於いて、王朝交代や国家の入れ替わりはただの一度も起こっておらず、他国や異民族により国家を滅ぼされて完全に支配されたという事も、やはり一度もありません。
その長い歴史の中で、政権を担う政体こそ朝廷、摂関家、幕府、内閣など幾度も変遷を続けてきましたが、世界の王室には類の無い万世一系の皇統によって、初代・神武天皇から令和の御代の今上天皇に至るまで、皇位はただの一度も途切れる事なく連綿と継承されてきました。
時の政権の最高責任者(摂政、関白、太政大臣、征夷大将軍、内務卿、内閣総理大臣など)は古代から現代に至るまで、いずれも天皇から任命(大命降下)される事でその正当性が内外に保障され、天皇の権威によって、国民はその御高恩に畏敬と感謝の念を捧げつつ、歴史・伝統文化を築き上げてきた事から、我が国には明確にひとつの国家としての連続性が認められるのです。

ギネス世界記録(ギネスブック)に於いても、日本の皇室は「世界最古の王家」として認定されており、また、アメリカのオバマ大統領は、平成26年に来日した際に出席した宮中晩餐会でのスピーチで「日本の皇室は2,000年以上の長きに亘り日本人の精神を体現してきました。今夜、その精神を陛下の平和への思いの中に感じる事が出来ました」とも述べており、つまり我が国が世界最古の国であるという事実は、決して日本人だけが所謂 “自国贔屓” で勝手にそう思い込んでいる独りよがりの類ではなく、国際的にも認められている厳然たる事実なのです。
ちなみに、日本の次に国家としての歴史が長いのは、王室が成立して約1,100年のデンマークで、その次に歴史が長いのは、王室が成立して約950年のイギリスとされています。

 

近年は、日本の国の成り立ち(神武天皇の御即位など)については小・中・高校でもほとんど教えていないため、大学生でも、「日本はいつどのように出来たのか」という問いに明確に答えられる人は少ないようですが、『 紀元前660年2月11日(旧暦の神武天皇元年1月1日)に神武天皇が初代天皇として即位された事を建国の由来とする我が国は現存する世界最古の国家である 』という事を改めて知ると、私達は日本人である事にもっと誇りを持てるのではないでしょうか。
以上の事を踏まえて改めてまとめると、建国記念の日とは、偉大な建国の大事業と、国が今に続いている事に感謝しつつ、その精神の継承を期して国民が一丸となってお祝いをする日、と云えるでしょう。

その建国記念の日の本日は、建国の地であり神武天皇を主祭神としてお祀りする奈良県の橿原神宮をはじめ、全国の神社で、紀元祭(神社によって「紀元節祭」「建国祭」「建国記念祭」「橿原神宮紀元祭遙拝式」など名称が異なります)が斎行され、留辺蘂神社に於いても、午前7時30分から紀元祭を執り行ない、日本建国の礎に思いを馳せ偉大な建国の大事業を祝福し感謝の真心を捧げました。

 

ちなみに、留辺蘂神社の紀元祭は、実は昨年から始めたばかりであり、そのため斎行回数としてはまだ2回目なのですが、私としては、自分が宮司に就任したら、新嘗祭と共にこの祭典は是非斎行したいと強く願っていた(新嘗祭は一昨年から始めました)、思い入れの強い祭典でもあります。